| 60.国家(建築)資格試験 その4 |
目次へ
●御意見、御感想はこちらから e-mail : jun@junsetukei.com
大学時代の話をする前に、ふと思い出したことがあるので付け加えてみる。
前述した建設現場に勤務していた中では、話せば切りがないくらい出来事があったのだが、特に印象に残っていることをお話しすると、実はこの建設現場では二棟の建物が同時進行で工事されていた。
一つは私が勤務していた会社が工事をしていた診療所(補強コンクリートブロック造二階建)で、もう一つは日本でも有名な住宅販売会社S社が院長の自宅を建設していたのだ。
院長の自宅は、大きな屋根を持つ鉄筋コンクリート造壁式構造の二階建で、当時はまだ丁稚の私から見ても、医者とは随分裕福で贅沢なものだと思ったものだが、この工事現場でヤレヤレを目撃してしまったのである。
大人の中には汚ない人物がいることは、子供の頃より親から聞かされてはいたが、社会人なった途端にそれを目の当たりにした。
ある日のこと、S社は行政による配筋検査を受けていた(工事中である院長の自宅の2階壁・屋根部分)。行政の配筋検査が終わった数時間後であったろうか、二トントラックが現場にやってきて何やら作業を始めだした。
そして、その荷台には鉄筋が積み込まれ、このトラックが現場を離れる間際に、S社の現場所長はトラックの運転手から現金(遠目ではあったが札を数える仕草が見えたので・・・恐らく間違いない)を受け取っていた。
それを見ていた私の上司が呟いた「こいつ、屋根の鉄筋を抜いて売ったな!」。
私は「そんなこと出来るんですか?」と聞くと、「まあ現場ではよくあることよ」と言うので、続いて「そうなんですか、それで、あれは幾らくらいになるんですか?」と聞けば、「見たところ、4〜5万かな」の返事であった。
当時私の給与は基本給が五万円弱で、残業手当等が付いて六万円台であったと記憶しているが、会社と建築主の信頼を裏切る行為は許し難いものを感じた(私の給与を記したのは、当時の給与体系からS社の現場所長が受け取った金額がどの程度かを理解していただくためである)。
後に私が設計事務所に勤務し、構造計算が出来るようになってから解ることだが、この鉄筋(屋根のスラブ筋:俗に言うスラブ上端トップ筋)を抜いたところで地震や台風でこの建物が壊れることはないのだが、屋根のひび割れ防止は期待できなくなる(だから、それがどうした建物が壊れるわけではないと言われれば、それまでなのだろうが、上品質のものを建築主に提供できないことは、私にとって後ろめたい)。
それにしても、S社は現在でも一流企業であるにもかかわらず、このようなことが現場で起こる以上、やはり建設会社による「設計施工」の恐ろしさは当時の私でも感じたものだ。
そう言う意味では、S社の現場所長はこのことを知っていて、鉄筋を抜いたのだから、建物の構造のことを良く理解していたと言うことにもなる。
しかし、幸いなことに、私の上司は構造的には無知で、その上小心者であったため、このようなことは起こらなかったが、どちらが人として優秀なのか、人として立派なのかについての疑問が残った。
そして、現場に出入りする多くの人達を観察している内に、「人」とは何とまあ凹凸の激しい性格(性分)を持った生き物で、良いところと悪いところが同居しているものだと、つくづく感じた若い頃であった(俗に人の性格・性分は一長一短と言うことだ)。
次回は大学生活の話です。
2008.8.18
|
|
|